Act,02

中尉が人を払い、部屋にはまだ意識の無い女性がソファーに落ち着けられ
ロイとエドからざっとここまでの経緯を中尉とアルが聞き終えていた。

「願いが叶うおまじない?」

冒頭のロイとまったく同じ疑問符を浮かべながら、中尉は未だ意識の無い女性を見て首を傾げる。

「それって昨日図書館で見つけた奴だよね?
兄さん興味無いって言ってたのに借りてたんだ」
「うっせー気になったんだから仕方ないだろ」

兄弟の会話を横耳に、中尉は女性に注いでいた視線をロイへと向ける。

「で、経緯はともかく、大佐は何を願ったんですか?」

「わ…私は別に…ただ好奇心でだなぁ…」

「ぷっ……でも発動させたのは大佐だもんなぁ」

願いの内容を知るエドはにやにやと嫌らしい笑みを浮かべながら楽しそうに二人を見つめる。
見つめられた本人は中尉からの厳しい視線から目を逸らしながら冷や汗をかきながらぼそりと一言呟いた。




「腿の綺麗な…お…幼な妻を……」




間髪入れず銃声が室内に響いた。





「温泉……私の温泉旅行……」




『『『『は?』』』』



いつの間にか目を覚ましたのか、4人のやり取りを見ていた女性がポツリと一言漏らし、一斉にそちらへ視線が注がれる。


「えっと……大丈夫ですか?どこか痛む所とか……」

やや傍観者となっていたアルが、鎧の手を伸ばすと、女性は不思議そうな目でじっとその顔を見上げる。

「痛い所はないけど…」

発せられた声から感じる違和感に小首を傾げるも、自分へと伸ばされた好意の手を両手で握り締めていた。

「えっと……お名前を伺っても宜しいですか?私はと申します」

「そんな畏まらなくても……僕はアルフォンスです。アルフォンス・エルリック。
兄さんや皆からはアルって呼ばれてますから、お姉さんも気軽にアルって呼んでくださいね。」

「ありがとう。アルさん。」




「コホン」

和やかな二人の挨拶を大人気ない咳払いが遮り、この事件の当事者であるロイが二人の間に割って入った。

さんと言ったね。私にも自己紹介させてもらえないだろうか。
私の名はロイ・マスタング。地位は大佐だ。そして君を望み、呼び出した人間なのだが……」
「俺エド!エドワード・エルリック!アルフォンスの兄貴。俺の事も宜しくなっお姉さんっ。」


掛けられた声に振り向くも、ロイの挨拶が終わるより早く、エドがロイの背後から頭へ飛びつき、
右手を差し出すと、は笑顔でその手を握り返した。

「兄って…二人は男の子?アル君声綺麗だし、エド君もとっても綺麗な髪をしてたから女の子かと……」

「兄さん女の子って言われたの初めてだね…僕も初めてだけど…」
「確かにな…」

「???」

複雑な表情を見せる二人に笑顔のまま首を傾げていると、
エドの下敷きになっていたロイが立ち上がり、エドとの手を振り払う。

「なにすんだよ大佐」

起き上がり様床に尻餅つきかけたエドが講義の声を上げるより早く、宙に浮いていたの手をロイが握り締めた。

「改めまして。私が君を望み、ここに呼んだ人間なんだが君の名は…聞いたことの無い響きだね。」

兄弟の時とは違い、握り締められた手に若干の胡散臭さを感じながらも、
先ほどの自己紹介に感じていた違和感に気づき、顔を上げる。

「あぁ…えっと……だからファーストネームがかな?
って呼んでもらえれば…それが正しいのかと思います。
でもここって……日本じゃない?でも日本語……。」

名前を訂正した後、まだ名を聞かぬリザと、続けてエドを見ると首を傾げ、頭の中には漫符で溢れる。

「日本?日本語?」
「なんじゃそりゃ…」
「少し…落ち着いて話をする必要が有りそうだな…君もここに来た訳と経緯を知りたいだろう?」

口を揃えて聞いたこと無い国名に好奇心の色を見せる兄弟を尻目に、
ロイが立ち上がり、の隣へ座り直と、発せられた言葉に素直に頷いた。


「まず君の事を聞いてもいいかな?プライベートな事を伺うつもりはない。言いたくなければ答えなくても構わない」

さりげなく肩に手を回し、胡散臭い笑顔を向けながらロイがを抱き寄せる。

「私は…私は死んだそうです…門番さん曰く……」

ロイの腕の中、居心地悪そうに薄い笑みを浮かべ、俯くがゆっくりと語りだした。


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なんかやっとここまでかいって感じですなぁ
つかナンパモードの大佐の笑顔って胡散臭いと思うのは私だけですか?
あんな表情作ってナンパしてる29歳とか思っちゃうと笑わずにはいられない(プププ
若いよね大佐