Act,05

ドリーム小説 「お帰り。早かったな」

表のエドと合わせて軽装で自分を出迎えるロイを見、

「エド君と取っ組み合いの喧嘩でもしたんですか?」

埃まみれのロイに紙袋を持った彼女が言った一言にロイは脱力した。






「とりあえず君の部屋に案内しよう……」

徹夜明けの上の肉体労働も彼女の為と、
扱いの難しい子供を巻き込んで部屋の改装に励んだと言うのに、
その一言は涙を呼びかけた。

中尉の蔑んだため息も輪をかけたのは言うまでも無い。


思っていたより量は少ないとはいえ、二人の荷物をまず落ち着けさせ、
鋼のと私にいたってはシャワーを浴びて着替える必要もあったので、
明日にでも案内しようと思っていた彼女を部屋へ連れて行く。


「ふわぁ……」


洗濯用ではあるも小さな庭の付いた3階建ての家。
国家錬金術師の上、佐官職にある人間としては小さな物だったが、手狭に思った事は一度もなかった。

彼女の部屋には、3階より更に上、通常なら物置にするはずの、屋根裏を改造した物だった。

「すごい…すごいですロイさんっ!って……」

扉を開けて直ぐ目の前の天窓に広がる景色に寄せられてか、
窓辺へと走るを背中から抱き止める。

「まだペンキと壁紙の糊が乾いてなくてね…この部屋に入れるのは明日からだよ…」
「そうなんですか?残念…」
「申し訳ないが、今夜は下の客間で休んでもらうが、構わないね?」
「はい……」

荷物を持ったままの彼女を抱きしめると女性独特の甘い香りが漂ってくる。

「ロイ…さん?くすぐったいんですけど……」
「もう少し……夜勤明けの肉体労働でね、労ってくれてもいいだろう?」
「えっと…労うって…」

くすぐったそうに首を竦めるの腰を抱く手を緩め、抱き角度を変える隙に、
彼女は起用に荷物を床へ置き、私を抱き返し、そっと頭を撫でた。

「ありがとうございます。本当に…」

求める物とは違う形で帰って来たものの、
彼女の少しはにかんだ笑顔に頭に置かれた手を取り、笑顔で返した。

「大佐ーー飯どーすんだー俺らも泊まってっていいのかー」

そのまま腰を抱き寄せようと手を伸ばした時、下からの余計な声がその行動を遮った。

「エド君達も泊まるって…あの二人ってどこの子なんですか?」
「少し待て。宿泊は構わん。好きにしろ」

まだ名残惜しい彼女のぬくもりを手放し、床に置かれた荷物を取ると階段を下り、
今日泊めるつもりで掃除をした客間へ彼女を案内する。

「あの二人もいろいろ訳ありでね…当方司令部を拠点にした今は…そうだな、旅人だよ」
「旅人……幸せの青い鳥?」
「なんだそれは?」

客間の扉を開くとここでもは簡単の声を上げ、自室に案内した時には劣るも、
嬉しそうな顔を見せてくれた。

「ロイさんのお部屋は何処なんですか?二人は何処に泊まるの?」

私に習って荷物を机に置いたは自ら私の手を取り、家の中を案内しろと言わんばかりに廊下へと出る。

「待ちなさい。順番に案内するから」

引かれる小さな手を握り返し、「さっさと下りて来いと」せかす鋼のの元へ二人で向かった。





「まーったく大変だったんだぜ?」

埃まみれの男2人、風呂に入り中尉に手配させた夕食に舌鼓を打ちながら鋼が口を開く。

「2階の大佐の部屋と3階の書斎をまるごと入れ替えて、客間掃除してさぁ」
「でも殆ど業者の人がやってたじゃない。僕達は書斎の本運んだだけだよ」
「それが大変だったっつーの」

食べる口も話す口も休めない鋼のの話を笑顔で聞きながら、は礼と侘びを繰り返していた。

「そういえばちゃんお食事は大丈夫?お口に合うかしら?」
「あ、少し味は濃いけど大丈夫です。これ頼んでくれたのリザさんなんですよね?
ありがとうございます。」



5人で囲む食卓に並んだのは魚料理だった。



「なんだ…好き嫌いでもあるのか?」
「今日少し市場の方も歩いたんですけど、見たことの無い食材ばかりだったそうですよ。
肉が苦手なような事を言っていたから魚中心にしたけど正解だったみたいね」
「少しづついろいろ試してみます。調味料も調理方法も。
お野菜なら食べれない物もありませんでしたから……
私の場合まず、食わず嫌いから克服しないと飢え死にしちゃいますね」



食事を続けながら、二人から今日の買い物の話を聞く。
子供と言うのは便利なもので、私から聞き出さなくても兄弟の口からへと質問が飛び、
彼女はそれに答えていく。

そういえば食事の前に彼女が両手を合わせて謎の挨拶をしたときには驚かされた。
鋼のに至っては彼女の顔を睨みつけ、弟が慌てて彼女にその訳を問う。


「食べる前に「頂きます」。食べた後は「ご馳走様」って…こちらではなにも言わずにお食事始めるんですか?
お食事に限らず、お風呂を頂く時なんかにも使います。
手を合わせるのは…なんて言うか感謝の形ですね。お食事以外の時も掌を併せるんです…まぁそれは追々…」


話しを聞けば聞く程見えてくる……食事の違い。文化の違い。
は笑顔で答えて行くも、その表情には僅かな陰りが見え隠れしていた。





長めの食事をと後片付け、お茶まで済ませ、夜も更けた頃中尉を2人で玄関まで見送る。

「リザさん今日はありがとうございました。
これからも本当に色々よろしくお願いしますね……」
「そんな顔しないで…私は明日仕事だけど、またお休みの日にでもお買い物に行きましょう?」
「本当に送らなくて良いのか?」
「結構です。今夜はご馳走様でした大佐。では明後日司令部で…」

中尉がに微笑みかけ、我々はお互い軽い敬礼をすると彼女は夜の街へと姿を消し、
その背中を何時までも見送っていたの肩を抱き、家の中へと戻った。






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いちゃいちゃーーーー!らぶらぶーーーーーー!

ちょっとだけかけた!ちょっとだけ!
もっと書くもっと書くぅ!

大佐のお家のモデルはエマのケリー夫人宅です。
大きすぎず狭すぎず。
地下もあって、ワインセラーと研究室。
1階は玄関台所、風呂・洗濯場等の水場
2階がリビング・書斎(元大佐の自室)
3階が客間と大佐の部屋(元書斎)
で屋根裏がヒロインの部屋ですが、なんつーかエマの部屋そのまんまかわいらしく改造したような感じです。
ロフト部屋みたいなイメージですね。
ペンキと壁紙の張替えは業者が(笑)