Act,07

ドリーム小説 「あー緊張する……」

肩より少し伸びた髪を纏め上げ、シャワーから振るお湯に体を預ける。
確かに私も抱きつき魔だけど男の人に抱きつくなんてそんなに無い事で……

「男の人ってあんなに固かったっけ?軍人さんだからかなぁ……」

お湯を止め、リザさんとのお買い物で買ってきたスポンジで体を洗う。
石鹸の香りは日本より良いかも…

「男の人と同棲か…文化も違うし…お水も合うかなぁ…日本人は胃腸が弱いのに…」

体を洗い終え、入浴剤を入れた湯船へと体を沈める。

「雑貨屋さんかわいかったな…きっとずっと過去なんだろうけど、
人の感覚は変わらないんだ…そうだよね…同じ人間なんだもん…」

温かいお湯の中でちゃぽんと音を立てながらマッサージを始める。

「水道の水を飲めるのは日本だけって本当かなぁ…
まぁ最近は私もミネラルゥオーター飲んでたから平気だけど、
外国のミネラルウォーターって微炭酸はいってたりするのかな…」

しばらく前に好奇心からコンビニで買った水の味を思い出す。
苦手なんだよあれは……
今日のお魚もおいしかったけど、スープはちょっと苦手な味だったし、
そういえばポトフ系も苦手だったような気もするし…
食生活だけで前途多難な気がしてならない。

「洗濯機もないなら洗濯板で洗濯するのかな…冬は寒そう…
あーそういえばこっちの方では洗濯物って叩いて洗うんだっけ?」

時折ぶつぶつと一人呟きながら、
お湯が冷め始めた頃、マッサージを止め、立ち上がると軽い立ちくらみをこらえて、
束ねていた髪を下ろし、それを洗い、そのまま時折手を止めながらも入浴を終え、
リザさんとの買い物で購入したパジャマに着替えて部屋に戻った。

「あ…ドライヤー…」

肌の手入れを済ませ、コンセントを探すも見あたら無い。
髪乾かさないと風邪引く風邪引く。

「ロイさーん電気の電源ありませんかー?」

スリッパの音をぱたぱた立てながら、廊下に出て、
どちらかの部屋に居るであろう家主の名前を呼んでみた。




「長かったな…温まって来たかい?」

エド君達の部屋から出てきたロイさんが、私の手元にあるドライヤーへと視線を落とした。

「えっと…これがさっき言ってたドライヤーなんですけど…
どこか電気のコンセントありませんか?700W程必要なんですけど…」

「なんだそれ…」

二人の会話にエド君とアル君が顔を見せ、やっぱり私の手の中にあるドライヤーに瞳を輝かせていた。

「電気はあるが…700Wもあったか……」

「えっじゃぁパソコンも無理かなぁ…でも考えてみたらそうかもしれない…
電気なら20Wでもつきますもんね…うーん…」

「無いなら作ればいいじゃん。このコードの先っぽだって見たことない形だぜ?」

いつの間にか私の手から離れたドライヤーは二人の兄弟が手に取り眺め、
コードの先を指してエド君がさらりと言った。

「錬金術。電気は大佐が作って、それを圧縮してこの機械に流し込む物を俺達が練成してやるよ」

「ロイさんが作るって…自転車でもこぐの?」

話がさっぱり進まないので、とりあえずリビングに下りようとロイさんに言われ、
4人そろってリビングのソファーに腰掛けるとアル君が模様替えの時に出たゴミから適当な物を漁ってきて机の上に置き、
エド君が乾いた音と共に掌を合わせた。

「嘘……」

それは一瞬で…

「ほらよ、後は大佐がここに発電のエネルギーを気体から捻出させて送り込めば、
動くと思うぜ?俺の腕の構造に比べたら簡単なもんだよ」

青白い稲光と共にティッシュ箱程度の発電機が現れ、
今度はロイさんがトカゲさんの模様の書かれた手袋を嵌めて、
そのまま指をこすり合わせると、小さく乾いた音を立てた。

さん?」

「えっと…魔法?錬金術って大きな鍋に原料入れて煮込んだり、
フラスコとかビーカーとか遠心分離機とか……」

「何の話してんだよ……」

今はじめて実感した。
ここは過去の世界じゃない。
違う世界…異世界…パラレルワールドなんだって。










「とりあえず髪を乾かしなさい」

とロイさんに言われて、作ってもらった発電機を使ってみれば、ドライヤーはきちんと動いて……
なんだかよく分からないまま髪を乾かしてると、
今度は3人がドライヤーを不思議そうに眺めてる。
髪が乾いてからそれを3人に預け、自分の荷物を取ってくると部屋に戻ると、
鞄の中から着替え類だけを取り出して、そのままリビングへと戻って、中身を披露した。


「これがさっき言ってたパソコンで…こっちが…ハロです。で、デジカメと……」

温泉一人旅行も寂しいからと、鞄に放り込んで来たピンク色のハロの電源を入れて
カーペットの敷かれた床に転がすと、けたたましくしゃべりながらそこら辺を転がり始める。

「なんだこの生き物は…」

最初驚いてハロに警戒していたエド君とアル君も、手にとって眺め、
いつの間にか話しかけ始め、ロイさんはやかましいらしく、唖然としている。

「マイクロペットといいますか…電気で動いて、簡単なプログラムで育成もできるペットです。
時計機能と目覚まし機能も付いてますよ。ハロ!時間は?」

「ジカンハーッ? ゴゴ9ジ30プン   カモネ!」

「かもねって……」

「そういえば時差もそんなにありませんね…時計が合ってる…」

ハロが言った時間と、壁に置かれたレトロな振り子時計の時間を見て一人呟く。
私は続けてさっき作ってもらった発電機の電気を借りて、
愛用のノートパソコンの電源を入れた。

アル君がハロを抱き、A4サイズの小さなモニタを3人揃って私の後ろから覗き込んできた。

「私の国では映像技術が発達してまして…こちらのラジオみたいに、
TVって言うものが一般の家庭にも普及してるんですね。こんな感じで…」

適当に先日友人からもらったミュージッククリップを再生してみる。

モニタに備え付けられた小さなスピーカーから漏れる音と、
小さな画面の中、カラーで動く映像に3人が食い入るように見始めた。

「TVはラジオと同じで、専用の映像電波をキャッチする物なんですけど、
これはパソコンっていって、主に電話回線からそういった映像データをキャッチして、
一度この機械の中に保存して再生する物なんです。」

きっと意味分からないんだろうな…と思いながらも説明し、
人の話も聞かないで、映像を見てる3人にパソコンを預け、まだ解説の終わっていない、デジカメを手にする。

手にしたデジカメのスイッチを動画モードにして、
狭いだのなんだのって言い争い始めた3人の姿を録画し、
ミュージッククリップの終わった所で、開放されたパソコンにケーブルをつなげる。

「これはデジカメ。カメラです。ほら」

適当に3人の姿を今度はカメラモードで写し、液晶で見せながら、
片手間にさっき映した映像データをパソコンに転送する。
それを見せると再び3人はパソコンに食い入った。



3人の反応が面白い。




きっと私がさっき錬金術を見たのと同じような物なんだろうなぁと、
三者三様に大きさの違う3人の姿を眺めながら私は私で眠たくてうとうとし始めていた。









一つ一つに丁寧に使用方法と利用用途を説明しながら、は鞄の中身の中身を見せてくれた。

ドライヤー・パソコン・デジカメ・ケイタイデンワ・アイポッド

どれも見た事の無い物ばかりで、
彼女がどれだけ進んだ文明の中で生活していたのか、私には及びも付かない。
そんな文明の中で生きてきた彼女がこれからこちらでの生活に不自由が無いはずも無く、
先程までの笑顔が痛く身にしみる。

どうやら文字も自国の文字が読めたようで、確認できた上で笑顔を見せると、
今度は操作に不自由だろうと、文字のモードをそれぞれ我々の言葉、
彼女曰く英語へ操作切り替えをしてくれた。



これは……」

彼女が言ったケイタイを片手に話しかけたると、
いつの間にか床にすわり、机に突っ伏して小さな寝息を立てていた。
私は立ち上がり、彼女の体をそっと抱き上げる。
身長は中尉程だろうか…並んで歩いていて頭の高さにさほど差が無かった事を思い出させる。


まだ興奮気味に彼女の見せた物にはしゃぐ二人の兄弟をそのままに、
私は彼女を今日の寝室へと運ぶ。

片手で扉を開き、ベットへ体を降ろし寝かしつけると、
自分もベットへ腰掛、黒い髪を撫で彼女の寝顔を見ていた。

「幼な妻か……」

不可抗力とはいえ、自分が原因で呼び出したかもしれないに、
浮き足立っていた自分が少し恥ずかしい。
無防備な彼女の額にキスを一つ落とすと
「おやすみ」と一言ささやいて、まだ騒ぐ兄弟の下へと部屋を後にした。





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3人におもちゃを与えてみました。
つか家電製品は東日本標準で(笑)

作中ハロが出てくるのは私がガンダムSEED好きだからですはい。
ぴんくちゃんの性能は実売されてるハロよりちょとばかし高性能にしてあります。
実際は音声のみで時刻は教えてくれません(笑)
音声認識ハロ…あったらほしいなぁ…
最初はAIBOのERS−300シリーズとどっちにしようか悩みましたがコンパクトなのとしゃべるって事でハロになりました。
安易だのぉつかどうでも良い悩み?