Act,08

ドリーム小説 「気持ち良い……」


目はばっちり覚めてるのに未だ嘗て味わったことのない、
ふっかふかのベットの感触。

「あったかぬくぬく〜」


とはいえ、このままベットの住人になるわけにはいかない。
カーテンから漏れる光に誘われるように、名残惜しいベットの感触から抜け出し、
私はカーテンを開き、窓を開けていた。


「ふわー中世ヨーロッパ!」


昨日の事はすべて夢かと思っていたら、今こうやって目が覚めて、歩いてる。


「現実……なんだよね……」


頬に当たる朝の冷たい空気がリアルで、なんだか清清しい。
悩んだって仕方ない。
今日で1日目。
明日になれば2日目。
そうやって毎日積み重ねて行けば良い。
向こうでだってそうだったんだ……何年か前もそうだった。
住む所があれば大丈夫。また1からやってけば良い。

「まず仕事…その前に家事全般かなぁ…一般常識は生活の中で身に着けて行けばいいよね。」

異世界であっても、朝は来るし、夜だって有る。
人間がここで生活してて、動物だっている。

向こうの塀の上を歩く猫も、小さく高い声で鳴く鳥も、笑っちゃうくらい同じだもん。


「お腹空いた!ロイさん達起きたかなっ」


着替えを済ませて、窓を閉め、タオルを持って私は廊下へ飛び出した。





「おはようアル君」

顔を洗って一度お部屋に戻って、朝の支度を済ませてリビングを覗くと、
アルフォンス君がいた。

「おはようございますさん」

アル君の手にはピンクの丸い物体。

「……もしかして電源入れっぱなし?煩かったでしょ」
「あ…えっと…兄さんは怒ってましたけど、僕は別に……」
「面白いでしょーこの子。何か覚えた?」
「名前は呼んでくれるようになりましたよ」

昨夜広げた鞄の中身がそのままになっていた。ピンクのハロはアル君の手の中でころころ。
アル君も結構お気に入りな様子。

「片付けていいのかな…」
「あ、ごめんなさい。でも兄さん起きてきたら、また見たいって言うかも……」
「じゃその時はまた出そう。でないと散らかる一方だよ」

言いながら散らかし放題の机の上を片付け始めると、
自分の荷物以外に、メモの入った数枚の紙が目に入る。

「ねぇこれはなに?」
「あぁこれは…兄さんと大佐のメモ書きです」
「これ魔方陣?円の中に…三角…三角丸丸…そういえば昨日の夜ロイさんが可愛らしい手袋してたけど、
あれにも円の中に模様があったよね」
「かわいい?」
「トカゲ。かわいくない?」
「かわいい……」
「?」

トカゲ…かわいいと思った私の感性は間違ってる?

「えっとあのトカゲはサラマンダーっていって、錬金術で火を象徴するものなんですよ。
ここに書いてあるメモも全部魔法じゃなくて錬金術。これは練成陣。」

そういって、アル君がまだ白い紙にペンでさらさらと慣れた手つきで『練成陣』を書くと、
続けて昨夜見たときと同じ青白い稲光。

「はい」

必要なかったのか、散らかしっぱなしだった紙をアル君は一つに纏めて、
練成し、出来上がった子猫の小物を私に差し出した。

「猫?でもあんな紙切れから…すごくエコロジーな……錬金術……」

受け取った小物を掌に乗せ、書かれた練成陣と見比べながらぽかんとしてしまう。

さんに上げる。ところでエコロジーってなに?」
「え?えぇっとありがとう。アル君猫派なんだねーかわいい」

掌に乗せた猫の頭を指で撫でる。

「エコロジーって言うのは地球環境と人間との共存を考えようって意味で……
あ、ねぇそんな事より、アル君私朝ごはん作りたいんだけど、台所の使い方分かる?」

お部屋の片付けを済ませ、荷物ともらった猫の小物をお部屋に置いて、
アル君と一緒に台所へ向かう。
なんとなくお皿の場所だとか水道の使い方は昨日リザさんから教わったけど、
火の使い方。こればっかりは実践しないといまいちピンとこない。


「使い方云々以前に……」
「食材が何もないね……」


台所に入ってすぐでた二人の台詞。


いろんな戸棚を空けても有るのは簡単な食器。
冷蔵庫にはチーズと氷のみ。

「調味料すらないなんて…」
「あ、でも珈琲メーカーは立派なのがあるみたい……豆も揃ってる」
「ロイさんってお食事どうしてんだろうね、外食中心?
男の人の一人暮らしってそんな物なのかなぁ……」
「紅茶もありますよ」
「昨日飲んだもんねぇ…冷蔵庫の中からっぽってすごい……」

そういえば会社の男性人も家ではコンビニ弁当かインスタントラーメンだっていってたっけ。
台所に何も無い事を確認して、私達はハロの待つリビングへと戻っていた。

「材料何も無いし、お金も無いからお買い物にもいけないねぇ…
「お金…僕少しならあるからお腹空いてるなら買い物行く?」
「うーん朝ごはん用の簡単な物だけ買いに行こっか…どうせロイさんとエド君も食べるだろうし…
でも鍵はどうする?二人とも寝てるのに戸締りしないで出てくのは物騒だよ」
「戸締りくらいしなくても大丈夫かとは思うけど…朝起きて何も無かったら、
兄さんがお腹すいたって暴れそう」
「それは困るかな」

二人で顔を合わせ、笑いながら結局お買い物に行く事になり、
まだ夢の中にいるであろう二人にメモを残してから
朝の散歩がてらアル君とロイさんの家を後にした。




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書こうかどうか悩んだ末に書いたものの、肝心な事かけず@あふぉ
とりあえず二人で買い物にでも出かけてもらって、
道々親睦深めてからかなぁ……
やっぱり鋼だから色々とねぇ書きたいし、兄弟とも仲良くなりたいじゃん!