Act,09

ドリーム小説 「アル君この辺詳しいの?」
「他に比べれば…かなぁでもイーストシティって広い街だから知らない所は全然しらないよ」
「そっか……でもまぁ都会ならそんなもんだよねぇ…」

ロイさんの家を出てから、とりあえずパン屋へ行く事になり、
まだ朝霜の覚めやらない街中を歩いていく。
私は昨日履いていたサンダルと、白いスカート、小さい花柄を散らしたキャミソールに、
肌寒いからボレロのカーディガン。
おかしな格好では無いと思うんだけど、子供がこっち向いて指差したり、すれ違う人が振り返ったり。
もしかしてアル君が原因?

「アル君のその姿ってさ…もしかして普通じゃない?」
「ええっと……ごめんねさん」
「私は気にならないよ?少し気になっただけ。それに私も……結構普通じゃないから」
さん?」
「ほら!パン屋さんってあれだよね!」

一言余分に言っちゃって沈みかけてた私の目の前に香ばしい焼きたてのパンの香りが漂ってくる。
朝一番の焼きたての香り。
私はアル君からの追及逃れの為に無駄にはしゃいだ振りしてパン屋の扉を開いた。

「あ、卵も売ってるんだ……ライ麦パンが中心なのかな…小麦のパンも多いけど、
菓子パンは少ないね。アル君お金に余裕あるなら、こっちのパン買って、卵も買って行っていい?」
「朝ごはん買うくらいのお金なら大丈夫だよ。それに卵買うなら塩とかコショウもいるよね」
「牛乳もいるかな…オムレツでも作ろっかな…」
「牛乳…兄さんは飲まないよ…」
「何?エド君牛乳嫌い?それともアレルギー?じゃ牛乳入りのオムレツもだめかなぁ…」
「オムレツは平気。兄さん牛乳は嫌いなだけ。でもシチューは大好物なんだ」
「じゃ匂いがだめなのかな…まぁいいや…じゃぁパンと牛乳。卵とバターと……」

以外に品揃えの良いパン屋さんで、朝食に必要な食材を買って、二人で再び街を歩き始める。

「調味料まで…売ってるもんだね。助かっちゃった」
「そうだね。普通はあんまり売ってないんだろうけど、兄さん達起きてるかな」

和やかに話をしながら来た道を歩く。
帰宅してからも二人はまだ夢の中らしく、私は直接台所に入って、
アル君は二人が寝ている事を確認してから直ぐに台所へ来てくれた。

さっき街に出て気が付いた。あの視線。
こっちでは鎧を纏うのも普通だと思ってたら全然違ったらしいし何より、
アル君の足音……鎧を纏ってるにしては音がおかしい。
出てくる声が高すぎるのと……なにより空洞音に…それにこの感じは……

「ガスコンロなんだね…どうやって使うの?」
「えっと……」

ボウルに牛乳と卵。
ずいぶんきれいなフライパンを取り出して、コンロの摘みを回すも火は付かない。
首を傾げていると、台所の棚からマッチを見つけ出したアル君が火をつけてくれた。

「おー種火がいるんだね。婆ちゃん家にあったお鍋用のコンロと一緒だー」
さんの家は種火が無くても付いたの?」
「家のアパートはお風呂以外は電気だったから、コンロも電気コンロ。
実家はガスだけど、レバー回せば火はついたよ。電気が出す火花が種火かな」

説明しながらフライパンを暖めて、バターを落とす。

「二人の分は起きてから焼けばいいよね。アル君の分は…どうする?」
「僕は…お腹一杯で…」
「そっか……」

予想道理の回答に思わず黙ってしまう。
アル君はお皿と飲み物用意してくれて、私は用意してもらったお皿にオムライスを乗せる。

さんケチャップは?」
「私はケチャップとかソースってあんまりつけないんだよー素材で勝負!」

出来上がった朝ごはんを二人でリビングに運んで一人食べ始める。
アル君は電源が入りっぱなしのハロと遊んだり、新聞読んだり。
食べ終わって食器を片付けて…お茶を入れて一息ついて……

「ねぇアル君…ひとつ聞いてもいいかな?」
「ん…えっと…うん。」

迷いながらも返事を返したアル君はこっちを向いてくれた。
私は彼の隣に座り、大きな鎧の手に手を添えてみる。
やっぱりそうだ……

「アル君って…生き霊さん?この鎧の中は空っぽだよね……」
「生き霊って…」
「生きたまま、生きている人の恨みや執念が怨霊となって人にたたるもの……
幽体離脱と一緒で肉体は…生きてる…よね?その鎧に乗り移ってるんじゃないのかなって…」
「そう…だね。そうだよ…でも僕は別に恨みとか執念は無いかな?
えっと執念ならあるかも…兄さんの僕を死なせたくないって執念が、
僕の魂をこの鎧の体に定着させてくれてるんだ…錬金術で」
「そっか…錬金術ってすごいんだね…こんな事までできるんだ…
でも…魂が無い肉体は…事情は良くしらないけど、早めに戻らないと肉体がだめになっちゃうよ…
それともそれを探す為に2人旅をしてる?」
「うん…僕の体。それから兄さんもね。でもさん錬金術知らないのにどうして分かったの?
それに僕の肉体は生きてるって……」
「私ね。見えるんだよ…見なくて良い物。見えるって言うより感じるのかな……」

言葉を失い黙ってしまったアル君に少し無理な笑顔を見せる。
思わず彼の頭に伸びた私の手はそれを撫でていた。

「物心付いた頃から変な子だって言われてたの。
婆ちゃん家の部屋の隅に向かって話しかけて…そこに通っておままごとして……
迷子になって帰って来なかったと思ったら、けろっとした顔で帰ってきて、
みんなに「どうやって帰ってきたの?」って聞かれたら、
私が生まれるずっと前に死んじゃった筈の曾爺ちゃんの特徴を持つ人に帰り道教えてもらったとか……」

「他にも話し出したらキリがないよ」って笑いかけると、アル君は「もういいよ」って。
それから添えてた手を握り締めてくれた。

「ねぇさん…僕の体って生きてるのかな……僕らにはそれすら分からないんだけど……」
「生きてる…と思うよ?肉体が無い人の霊なら死霊として感じてると思うし……」
「そっか……ありがとうさん!さん…さんが嫌でなければこの話、
兄さんにしてもいいかな?これからの僕らの事、少しは進展しそうな気がするんだ」

片手でガッツポーズを作りながらアル君が明るい声を出してくれる。

「アル君にお任せするよ。必要なら私から説明しても良いし。
……アル君私の事怖かったり気持ち悪かったりしないの?」
「そんな事…さんだって、僕の事気味悪かったり怖かったりしないの?」

お互い言いながら、いつの間にか2人笑ってた。
普通こんな話してもその場の笑い話とか、酒のつまみにしかならないような話なのに、
信じてくれて、その上受け入れてくれたのがすごくうれしかった。


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なんだこれアル夢か(笑)
せっかくなのでちょっとだけヒロインさんにつけた特殊能力その1がなんか見える人(爆)

次はロイよー。デートだデート!