Act,11

ドリーム小説 エド君の食事の後片付けをして、
ロイさんに呼ばれて一晩お世話になった客間から荷物を持ってお部屋に向かって驚いた。
ベットに鏡台。クローゼットにその他もろもろ。
家具が揃ってたんです。


「これ全部…今来た方達が持ってきたんですか?」
「君の好みを先に聞くべきだったかな?
部屋の広さもあったのでね、昨日発注してしまったんだが、お気に召さなかったか……」
「お気に召すとかそういう問題じゃなくて!」


うれしいとか、すごいとか、そんな感情より先に、
幾らかかったのかが気になって思わずロイさんどなっちゃた。

それでもとりあえず荷物を置いて、洗濯の業者さんが来るからって、
昨日私が借りた部屋のシーツを剥いで、洗濯物を一箇所に集めて……
アル君は「大佐が好きでやってることだから気にすることない」って言ってくれたけど、
それでもやっぱり気にしちゃう。
もしかしたら次の瞬間には消えていなくなっちゃうかもしれない人間にこんなお金使うなんて……
自立するまでの少しの間お世話になるつもりだったのに、
なんだか申し訳なくて泣きたくなってきた。



「アルフォンスから聞いたよ、済まなかったね。彼も言ったと思うがあまり気にしないでもらえないか?
私が好きでやっている事なんだ。」


結局そのままロイさんに連れ出されて、買い物に出かけたものの、
私は彼の顔を見る事ができなかった。
買い物ってこの上まだ何を買うんだろう……
隣でロイさんが謝ったり、何処へ行こうって話しかけたり。
リザさんとの買い物も適当な返事しか返してなかったと思うけど、その時とは違う。

気がつけば私はロイさんの後をついて、大きな噴水のある広い公園の中を歩いていた。
水面が反射して、きらきら輝いてる。
天気の良い平日のひと時を過ごす街の人達が笑ってる。

歩くロイさんに、私は足を止め、それまで俯いていた顔を上げた。

?」

立ち止まる私にロイさんも足を止め、振り返る。

「ロイさんは…どうしてそこまでできるんですか……
昨日突然現れて、拾った人間に…次の瞬間突然消えていなくなってる可能性だってあるんですよ?」

震える私の手はぎゅっとスカートの裾を握ってた。
昨日は舞い上がってて気がつかなかった。
ロイさんが私にここまでしてくれる理由が見当たらない。
見ず知らずの他人に…しかも結婚前の良い大人が、異性と同棲を始めて……

「お部屋頂けただけでも十分怖かったのに……あんな高価な家具まで…私…私は…」

気がついたらぼろぼろ涙が溢れてた。
こんなに泣いたのって何時以来だろう…本当に大粒の涙って出るもんなんだって。
もう顔も涙でぐちゃぐちゃで、顔を伏せて伏せて泣いてたら、急に抱きしめられた。

「済まなかった。君からの話は聞いたが、私の話はまだしていなかったね。
心配しなくても良い…君は私が望んでこの世界へ呼んでしまったんだよ……」




『ちょうど良いや』



門番に言われた一言が脳裏を過ぎる。
じゃぁ私は…あっちで死んで…同じタイミングでロイさんに望まれたから……今ここにいる?
ロイさんは抱きしめた手で私の頭を撫でてくれる。
背…高いんだ…
日本人にしては高めの身長のせいで、付き合う男との身長の差がこんなに離れた事なかった……

「君を呼んだ責任も、もちろんあったかもしれない。
それよりなにより…私はね、君が来てくれた事を歓迎したかったんだよ。
ここに居て欲しいと思った。だから急ではあったが用意したんだ」

まだしゃくりあげる私の体をそっと離し、ロイさんがポケットから出した、
ハンカチで私の涙を拭いてくれる。
そのままそのハンカチに手を伸ばした手を握り返して、
少し屈んで視線を私に合わせ、微笑んでくれた。

「あの家に居てくれるかい?私が君を望んだんだ…嫌だと言っても君を手放すつもりは無いよ。」
「ロイさんが私を呼んだ…だから私は生きてる…」
「一人が長かったものでね、少しづつで良い、私が留守の間あの家の管理をお願いできるかな。」
「管理?」
「そう…食事を作って、掃除をして…私が帰宅したら「おかえり」と言って出迎えてくれるなら、
私はそれ以上望まないよ。」
「それって押し掛け女房ですか?私じゃなくても別に良かったんじゃぁ……」
「私が望んで、私が発動させた錬金術が原因で君は私の前に現れた。
きっと君でなければ駄目なわけがあるんだよ。」
「私でなければ駄目な分け……」

言葉を失った私の手をロイさんはしっかりと私の手を握ると
「君の部屋のカーテンと服を買いたかったんだ」って言いながら歩き出した。


私は掌から伝わる彼のぬくもりと、受け取ったハンカチを握り締めて、
目の前を歩くロイさんの背中を見つめ、涙は何時の間にか止まっていた。


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なんかこれ書いてて同居人の事思い出しました。
立場としてはロイなんですよねー。人とはいろいろ難しい。
舞い上がる気持ちとか、何かしてあげたいって気持ちと、
そんなもん余計なお世話と思う気持ち。

ヒロインさんの心情に関しては、ここに書いているまま裏はありません(笑)
せっかくドリームなので楽しい物にできればなぁと、こんな所で語ってみたり(爆)