Act,12

あれだけ泣いた後だから、
目はきっと赤く腫れているだろうし、
ナチュラルメイクとはいえ、崩れてもいるだろう。
そう思って、ロイさんに一度帰宅したいっていったら、

「そのままで十分きれいだよ」

って私の手を引っ張って街中へ来てしまった。

ショーウィンドの並ぶにぎやかな道。
昨日のリザさんとのお買い物の時と同じく、何もかもがすごく新鮮。
一番驚いたのが、同じ道を馬車と車が走ってる。
街に見惚れていちいち感嘆する私にロイさんが笑い出す。

「そんなに珍しいかい?」
「全部が全部新鮮です。私海外旅行にだって行った事ないのに…馬車だって初めてみました」
「君の住んでいた国には馬車は走ってなかった?」
「あーえっとテーマパークでなら見たかな…私の国では普通道路走ってるのは車だけです。
あと線路に電車。モノレールだとか……
元々独立した文化を持つ国でしたから、建物の建築様式も違うんですよ。」

街中歩く人達の服なんかはあまり古くさくなくて、少し安心してみたり。
それこそヨーロッパ貴族さんの着るようなドレスなんかじゃなくてよかったと思う。

ロイさんに手を引かれ付いた1軒目の店はおしゃれだけど高そうなブティックだった。

「中尉との買い物では服はまだかと思ってね。」

中に入るなり品のよさそうなホテルマンの様な店員さんが挨拶に現れて、
ロイさんと少し話しをするとそのまま奥へ、移動した先には30代か40代くらいの、
これまた品のよさそうな女性店員さんが出迎えてくれて、
そのまま私は………着せ替え人形と化していた。

「最近の流行だとこんな感じですね…いかがですか?」
「悪く無い。はどうだい?」
「えっと……」
「お気に召さないなら他の物を……」
「あ…いや…これでいいです……」

なんだかそんな会話の繰り返し。
正直買い物は好きだし、
服なんて買い始めたらキリの無いくらい買い込んで後から後悔しちゃうタイプの人間だけど、
これはさすがに楽しくない。

「次は……」
「あの…私もう良いですから…」
「しかしそれでは足りんだろう?」

何着か試着してる内に、気疲れして引きとめて見る。
確かにこれからずっと生活していく中でまだまだ足りないだろけど……

「今まとめて買ってしまわないで、少しづつじゃだめですか?」
「そうか…そうだな、では今日はこれくらいにしておくか。」

今まで待合用のソファーに座っていたロイさんが立ち上がり、
試着で身に着けたままの服も似合うからと、購入する事になり、元の服に着替え、
ついでに借りた化粧室でさっき涙で流れた化粧を直した私が試着室から出た頃には、
ロイさんがすべて手続きを終わらせて、入り口で待っていた。

最初はね。少し楽しかったの。
カジュアルな服から、ちょっとロリータ入った服まで、色々着せて貰えて。
でも自分で選んだ服を試着してるわけじゃないからか、直ぐに飽きてしまったのが本音。

「ごめんなさいロイさん。」
「なぜ謝る?」
「だって…せっかくのご好意なのに私途中で我侭言ってしまって……」
「謝るのは私の方だよ。君の好みや意見も聞かずにまた先走ってしまった。
さっき泣かせたばかりなのにね。」

言われてそのまま出かけた時の醜態を思い出し思わず赤面してしまった。

「今度…もっとこっちの事色々勉強してからゆっくりお買い物したいです。」
「そうだな…またゆっくり出かけよう。」

そう言ってロイさんは私の手を握り、私達はお天気の良い街の中を歩き始めた。
次に入った店はオーダーメイドのカーテン屋さん。

は何色が好きかな?」
「緑が好きです。後は水色も青も好きだし、ピンクも好きです。色って言うより色彩の感覚重視かなぁ」

店内に吊るされたカーテンを二人でゆっくり見ていく。
どのカーテンも結構厚手な上、地味な色ばっかりでなかなか決められず二人で室内をうろうろ。

「こっちってカーテンの色は結構落ち着いた色が多いんですか?
もう少し柔らかい色合いが好きなんですけど……」
「そうだな…せっかく壁紙も白にしたんだ、明るい色の方が君に似合うな…」

二人でそんな話をしていると、店員さんが「それなら」と奥から何種類かの生地を出してきてくれて、
二人して出されたカーテンが気に入って、色を選んだら、後はロイさんがサイズを伝えて、そのままご購入。
オーダーメイドなのに、今日中に仕上げて届けてくれるとの事なので、
そのままランチを取る為に店を出た。




「そういえば、ロイさんってミニスカート好きです?」
「……………なぜそう思う」
「なぜって…さっき買った服結構多くなかったですか?私も嫌いじゃないから良いんですけど……」
「なら良いじゃないか。似合うんだから履けば良い。」

オープンテラスの家庭料理のお店で頼んだサラダのポテトをつつきながら、
気になった事をそのままストレートに聞いてみた。
好きなんだ…ミニスカ…私なんかよりリザさんの方が脚は綺麗だと思うんだけどなぁ……
カロリー気をつけないと…太れないなこりゃ。

「これからどうする?何か他に必要な物はあるかい?」
「えっと…それなら本屋さんに行って、その後市場へ行きたいんですけど……」
「本屋?」
「お料理の本が見たいのと、後はどんな本があるのかなぁと…。」
「そうだな…たしかに本屋へ行くのが一番早いか。」

お食事も終えて、のんびりお茶を飲みながらぼんやり街を眺める。
本当にいろんな人がいて面白い。

「昨日も思ったんだが…君は食べるのが早いね。」
「は?えっと…「時は金也」ですよ。私の実家商売してたのもあって、
さっさと食べてさっさと片付けるってのが家訓みたいな物でしたから……
でもロイさん達と速度かわりませんよ?」
「我々は軍人だ。早くて当然だろう。
今まで一緒に食事をした女性で速度を気にせず食事をしたのは君が初めててかもしれないな。」
「やっぱり軍人さんって、お食事の塩分高いんですか?
後、一人暮らしの軍人さんって自宅でのお食事でも軍支給の缶詰おかずにしてるとか……」
「なんだそれは。たしかに塩分は高いか…
だが缶詰食事にしてる人間は…あぁ確かにハボックあたりならやってそうだな。」
「塩分高いと成人病になっちゃいますよ…私薄味好みだから色々大変そうだなぁ……」
「かまわないさ、今だってこうやって君と同じ物を食べているだろう?」
「これ十分味濃いですよ。」




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この買い物の話書くにあたり、
ドイツの家庭料理の検索しました。
意外としってる料理が多いのと、思ってた通り野菜の名前がしらないのばっか。
種類としては、日本の野菜のルーツと同じで、調理方もあまり変わらない事判明。
ドイツは一部海に面してるけどアメストリスは完全に内陸国なんですよね。
なので今度はオーストリアで検索。こんどはぜんぜん引っかからない(笑)
無くは無いけどいい資料にはなりませんでした。

ドイツってたらライ麦パンですが、ジャガイモの種類におっかなびっくり。
ポムドテールですよ。大地のりんごですよ。@関西ローカルネタ
結構作りやすそうなの多いので、自分でもちょいとドイツ料理作ってみようかなと。