Act,13 | ||||
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力の問題では無くて、量の問題。 食事を終え、本屋で料理の本を購入し、材料の下調べが終わった二人は、 両手いっぱいの荷物を抱え、市場を歩いていた。 「一度帰った方がよさそうですね…」 「普段はあまり休みが取れない」と聞いたは、ならばと調味料・小麦粉等を一緒に買い込み、 そのまま野菜を購入。現代と違い、小麦粉も10Kgの米と変わらぬサイズでしか売っておらず、 うっかりそれを最初に購入してしまったのが二人の敗因だろう。 一度荷物を置き、ベンチでが指折り材料を確認していると、 ロイが急に立ち上がり、青い軍服を身にまとった二人の軍人へ声をかけた。 「ハボック!ブレタ!良い所に……」 ロイに気づくなり、二人は見なかった事にして急に振り返り、走り出すも、 ロイはポケットから手袋を取り出し嵌めると指先を軽く擦る。 逃げ出した二人の目の前に小さな火花が現れ、二人は足を止め振り返る。 「大佐……こんな街中でなにすんですかあんた…」 「俺ら殺す気ですか……」 「貴様らが人の顔を見るなり逃げ出すからだろう」 3人の掛け合いに、なにもわからずが立ち上がりぽかんと見ている。 ロイが振り返り、肩を抱き寄せると二人に紹介をした。 「昨日から家の居候になった だ。 、こちらハボック少尉とブレタ少尉。私の部下だよ。」 「あ、はい。えっと です。初めまして。」 深々と頭を下げるの姿とロイの発言に、彼女に紹介された部下二人は口を開け、 ハボックに至っては銜えていたタバコを地面に落とす。 「ハボック、荷物に灰が落ちるだろう。」 「あ、はいすんません……って!大佐あんた何考えてんですかっ。」 「そうですよいくらなんでも同棲は無いでしょっ。」 「誤解を招くような発言はやめろ……。」 顔を上げるの目の前では紹介された二人が騒ぎ出し、ロイが再び指先を擦る。 から見ればただの漫才でしかない。 「仲…宜しいんですね…。」 「「「違うっ」」」 完全に蚊帳の外から傍観者となっていたが呟くと3人から同時に突っ込みが入る。 思わず入った突っ込みに、思わず「ごめんなさい」と謝罪の言葉を口にすると、 二人が改まって自己紹介を始めた。 「えーっとジャン ハボック少尉です。初めまして。さん。」 「俺はハイマンス ブレタ少尉です。よろしく。」 「よろしくお願いします。」 二人に差し出された手を一瞬戸惑いロイの顔を見ると笑顔を見せたので、そのまま順番に軽く握り返す。 「さて、挨拶は終わったな。ハボック・ブレタ。」 握手が終われば、名を呼ばれた二人の腕の中に、先ほどまでロイとが持っていた荷物が渡される。 「お前ら視察巡回中だろ?ついでだ。」 有無を言わせず荷物を持たせ、返事を聞くより早く、の手を取り、再び市場へと入って行く。 「良いんですか?お二人共お仕事中ですよね?」 「かまわん。この時間だからな。どうせサボリだ。」 「はぁ……。」 「お二人共本当にありがとうございました。」 買い物を終わらせ、帰宅し、荷物を運び終えた二人を玄関まで見送る。 「助かったよ。中尉には連絡を入れておいたからさっさと戻れ。」 礼を述べながらも作った笑顔は二人を無碍に追い払う。 「えっと…んじゃさん。また見かけたら声かけてやってください。」 「大佐、お疲れ様でした。明日司令部で……」 二人は軽い挨拶を交わし、それでも別れ際足並みを揃え敬礼をして帰って行く。 「軍人さんって大変なんですね……」 「そうか?しかしなぜハボックはファーストネーム……」 「はい?」 二人の背中を見送って、玄関のドアを閉める、はそのまま台所へと向かい、ロイは書斎へと姿を消した。 「クリームシチューの作り方に違いは無いから、さっさと作ってしまおう。 あとはつけ合わせにサラダと……」 ぺらぺらと今日買ったばかりの本を開きながらキッチンに立つ。 買ったばかりのエプロンを付け、買い物袋から調味料を取り出し棚に並べて行く。 「基本的には塩と胡椒。今度大豆買ってきてお豆腐作ってみよう。」 まな板に包丁。形は違えど用途は同じ。 包丁も種類が豊富で、一度使い分けて見たかったからか野菜を切るのも楽しくなってくる。 作業が進むにつれ、時間も経過し、夕方にはカーテンが届き、服が届き、 ベルが鳴ると「私が出るから」といちいちロイが声を掛ける。 シチューが出来て、サラダを用意する頃、ロイがキッチンへ顔を見せた。 「不自由はないかい?あぁ…いい香りだね。」 「あ…お味見しますか?シチューはもう出来てるんです。」 返事の代わり、隣に並ぶロイに小皿に入れたシチューを渡す。 「あっさりしてていい味だな…料理は得意か?」 「得意と言うか…必要でしたから。一人暮らしで貧乏生活もありましたし。」 受け取った小皿をその手で洗い、食器を伏せる。 「水道ひねれば水は出るし、ガスだって電気だって通ってて安心しました。 お台所も綺麗だし……同じ時代の日本だとこうは行かないんじゃないかな……。」 「ニホンか…私も少し調べて見るよ。君の言う調味料も手に入れば欲しいだろう?」 「……はいっ!」 思いがけない一言に笑みが零れる。 「で、私に何か手伝える事は無いかな?」 「お皿運ぶの手伝ってもらえますか?」 エド君はたぶんアル君の分も食べるだろうからと、 二人の皿はさりげなく半分づつ分けて盛り付け、日も暮れ、食事の準備が整った頃、 まるで見計らったかのように二人が帰宅した。 「おかえりなさい。エド君アル君。お夕飯できてるよ。」 「遅い。もっと早く帰って来い。」 図書館などとっくに閉館しているであろう時間に帰宅した二人を玄関で出迎え、 先にお風呂に入っておいでと、バスタオルを手渡し、4人一緒に食卓へ並ぶ。 普段では考えられないような早目で、にぎやかな夕食を終え、 片付けと入浴を済ませたを、 昨夜と同じように3人がリビングへ迎え入れた。 |
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醤油は麹菌が無いと作れないんですよー にがりなら手に入るかもしれないので、豆腐なら作れそうかなと思って書いてみた(笑) 当初ハボックなんて出す予定無かったのですが、 なんとなく思い立って登場していただきました。 そしていまさら気づく。ブレタとハボックは同じ階級…… なのに大佐のあの扱いの差…… 中尉が右手でハボは左。ブレタは? いあ別にブレタ好きってわけじゃないんですけどね。嫌いでもないけどさ(笑) |