Act,14

「等価交換」



なぜそこまでそんな一言に拘るのか…私にはさっぱり分からなかったけれど……



「アルから聞いたよ…あんたアルの魂の事、見破ったって…」

「でね、兄さんに相談したんだけど、さんに僕らの事…聞いてもらおうと思って…」

「二人の事?」

リビングでを待っていたエドはアルと共に自分達の過ちと経緯をゆっくりと話始める。
アルは終始俯き、
ロイはそれを黙って見守った。

御伽噺や新しいゲームかアニメの企画のようにも聞こえる二人の話。
ただ鎧に魂を定着させたアルフォンスは実在し、
エドワードが見せた右腕も硬く冷たい機械鎧なのだ。




「お母さん……」

「そう。母さんの笑顔がもう一度見たかったんだ。」

エドからの話を聞き終え、の口から漏れた一言にアルが返した。

「お母さんか……」

アルの言葉の上の空で、ぼんやりとその一言を再度呟く。

「あの…ごめん。俺アルからあんたの事聞いちまって…
それでアルもあんたに自分達の事話しておきたいっていったから……
嫌だったよなこんな話。忘れてくれてもいいからさ。」

さん…ごめんなさい。でも聞いておいてほしかったんだよ。」

の様子に謝罪する兄弟にロイはじっとを見つめる。
は上の空とはいえ、特に取り乱した様子もない。

「私には錬金術の事ってよく分からないから、今の話も……
二人の『代価』?の事もよく分からないけど……
もっと分からないのは、二人にとって『お母さん』の存在がすごく大きかったって事だよね……。」

意外な返答に二人が顔を見合わせる。

「私は…自分の意思で家族を捨てて一人になった人間だから……
だから今の話聞いててね…少し羨ましかったかな…
二人にそんなにまで思われた『お母さん』の存在と、
命に代えても守りたいと思った兄弟…家族がいたこと。」

そういっては立ち上がると、並んで話をしていた兄弟を両手を広げ抱きしめた。

「ありがとう。」

二人の耳元でそう囁き、軽く体を離すと穏やかに笑顔を見せる。

さん……」

アルフォンスの頭をが撫で、小さく笑う。
それにつられてなぜか二人も笑い出し、部屋の中には3人の笑い声で満ちていた。

「ありがとうさん。僕らは話聞いてもらえればそれでよかったんです。」

「俺達はあんたの話きいちまったからな。等価交換だ。」

「等価交換?」

「そ、この世の理はすべて錬金術の大原則。等価交換を元に作られてるんだよ。」

「質量一の物からは同じ一の物質しかできないって事だよ。」

「交換条件みたいな物?よくわからないけど、別によかったのに…
私が勝手に話しちゃったような物だし。
それにしても等価交換って…いままでパチンコでしか聞いたことなかったなぁ。」

「ぱちんこ?」

「日本独特の国民ギャンブルのひとつで、賭け事の一種だから18歳以下は遊べないんだよ。」

「なんだそりゃ…それは俺が子供だと言いたいのか?」

「子供じゃないの?だってまだ13歳……」

「いいんだよ!俺は国家錬金術師なの!もう大人なんだよ!」

「そんなに先急がなくても…」

「あははは……」

いつの間にかロイと共に傍観者と化していたアルが乾いた笑い声を発し、
「見てられん」とロイはアルに言付けお茶を煎れに席を立っていた。







「そういえば二人とも明日はどうするの?やっぱり図書館?」

ロイの煎れたお茶で一息付き、思い出したように口にする。

「その予定だけど…さんも一緒に来る?」

「ん…図書館には興味あるんだよ…一般常識とか、この国の歴史とかも興味あるし……
でも家事にも慣れたいし……」

「家事はかまわないからの好きなようにすればいいさ」

それまで黙っていたロイが口を開く。

「ありがとうございます。でも…うーん…じゃ午前中だけ二人についていこうかな…
お弁当持参して!3人でお昼食べよう!」

「おーそうだな。」

「それでお夕飯の買い物済ませて、帰ってくればいいよね。」

3人で翌日の予定を決める中、ロイは1人蚊帳の外。

「弁当か…それはもちろん私の分もあるんだろうね?」

「へ?えっと…必要ですか?」

「私だけ無いのか?」

「私が作った物でよければ喜んで……」

そこではじめてロイも会話に加わる。
議題は明日のお弁当と夕飯のおかずについて。

「サンドイッチに、夕飯の残りでクリームコロッケ作って……あ、そうだ!」

が急に思い立ち立ち上がる。
そのままぱたぱたとリビングを出るとどこからか小さな木片をと筆記用具を持って帰ってきた。

「えっと…作ってほしい調理器具と食器があるんです。」

紙にシャーペンを走らせる。

「お箸って言うんですけど…こういうの2種類作れますか?」

書かれたのは普通の箸と菜箸。
等身大の長さで書いたそれをは3人に見せる。

「物質系は鋼のの分野だろ。」

「兄さんがやるより僕がやる?」

「なんでもいいから作ってみりゃいいんだろ」

有限実行。エドワードが立ち上がり両手を合わせる。
青白い光と共に現れた2種類の端は、がさつで子供っぽい性格とは裏腹にきちんと図面通りだった。

「すごいすごい。お箸だっ!ありがとうエド君っ」

「兄さんにしては普通に作ったね。」

出来上がった箸を手に取り、うれしそうに抱きしめる
素直に喜ばれ少し照れた顔を見せるエドにアルが横槍を入れる。

「本当にありがとう。これで明日のお弁当のおかずが一品増えたよっ」

笑顔で出来上がった箸を抱きしめ、「キッチンに仕舞ってきます」と立ち上がり、
ドアのノブに手をかけるも、その手を止め振り返る。

「等価交換…そういえば昨日作ってもらった発電装置も…他だって色々…」

「それは…今朝だって今日の夕飯だって、あんた俺達が滞在中飯作ってくれんだろ?
だったらそれが代価だよ。」

「そ…それが等価交換なの?」

「それでいいんだよ。」

思わずロイの顔を見てしまったに、返ってきたのは呆れた笑顔だった。







リビングから戻ってベットへダイブする。
早寝早起きなんて一人の時じゃ考えれなかった。

改装された上、新品の家具。新しい部屋の香りは好き。

等価交換か……
今私がロイさんから与えてもらってるこれも、やっぱり代価を求められてる?
聞いてもきっと彼は、「そんなもの望んでいない」って返事すると思う。

『等価交換』って言葉の意味は私にはやっぱり理解できなかった。
あの子達にとって『母親』って存在が大きいから大きいだけ
そんな言葉に囚われてるのかなとは少し思った。

だって…そんなに思われてた『お母さん』なら
二人に与えられてた愛情ってなんの代価も見返りも求めてたはずないんだから……



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等価交換の原則って難しいよね…
だから錬金術って使える人と使えない人がいるのかなぁと勝手に想像(爆)

にしても、アニメ最終回のホーパパのあの台詞に激しく共感した人間としては書かずにいれなかったって感じです。
それにしてもこれはロイ夢…ロイ夢なのに……