Act,16

ドリーム小説 初めての一人歩き。
空っぽになったアル君お手製のバスケットを持って、
お夕飯のお買い物とロイさんのお弁当箱探しです。

「……お弁当箱って何処に売ってるの?」

アル君の付き添いを断って、一人街を歩いてみたのは良いけれど、
どの店で何が売っているのかさっぱりわからない……

「市場の人に聞いてみようかな……」

スーパーマーケットもデパートもないんだよね。
ウィンドウに飾られた雑貨や服に気を取られながらも、足はゆっくり市場へ向けて。
さっき新聞読んだばかりで少しは警戒してたけど、
街を歩く人の顔は平和な都内を歩く人達の顔とは違って表情豊かで……

「私は今どんな顔してるのかな…。」

隣を走り去る子供の顔はきらきら輝いてて、本当に楽しそうで、
顔を上げてウィンドウに写る自分の顔を覗き見てみる。

「ロイさんは…なんで私なんかを望んだんだろう……。」

抱きしめて囁かれて、そのままその言葉を受け入れてしまったけれど、
お弁当差し入れてくれるような人がいるなら、どうして私を望んだんだろう。


破局した後?


婚約者に逃げられたとか…あんな大きな家に一人暮らしだし、ありえないわけじゃない。

…………実はリザさんも昔の女だったりして。

「さっさと仕事見つけて出てくのが無難かな……」

「仕事って何すんの?」

「だからそれを見つけて……って」

突然後ろからかけられた声に振り向き言葉を失ってしまう。

「こんちわ。さん。」

「こ…こんにちわ…えっと…」

「ハボックだよ。ジャン・ハボック。んで、どんな仕事探してんの?」

「あ…えっとどんなのがあるのかなーって……」

「ふぅん…箱入り娘さんならできる仕事なんて限られてるだろ。」

「私ここくるまでちゃんと一人で仕事して一人で暮らしてました。」

「へぇ…前と同じ職種じゃだめなのか?」

「同じ職種は絶対に見つからないと思います。」

「絶対…」

「そう。絶対。
んーでもこっちにもラジオってあるんですよね…だったらラジオ局で働けないかな…。」

「何の仕事してたんだよ……」

「企画・製作・広報・営業……なんだろう…IT系のマスコミ関連事業です。」

「………………あそ。」

「聞いてもわかりませんよね?あ……ハボックさんこの辺でお弁当箱売ってるお店知りませんか?」

「弁当箱?そういや大佐今日は弁当持ち込んでたみたいだな……。」

「あのお弁当箱借り物だったらしくて、今日お買い物ついでに買ってきてくれって頼まれたんですけど、どのお店に入れば売ってるのかさっぱり分からなくて……。」

「へぇ手作り弁当か、羨ましい。」

「今の私にできる事って家事くらいですから……。さっさとお仕事見つけて、お金貯めるんです。」

いつの間にか咥えていたタバコの火を消し、
一緒に歩いていたハボックさんに案内されて入った雑貨さんでかわいい食器に気を取られつつも、
お弁当箱発見。

お買い物に付き合ってもらったハボックさんにお礼を言って、
バスケットを持ったまま再び一人で歩き出した頃、一軒のお店の前で足が止まった。

「ピアノだ……」

楽器屋さんのウィンドウの向こうに見えたのは、お店の象徴でもあるグランドピアノだった。

「楽器屋さんバイト募集してないかな……」

お夕飯の準備の事などすっかり忘れて、
ウィンドウに張り付いていた私を店員さんが声をかけてくれた。

「弾いて行きますか……」

一言そう告げると初老のおじ様は私を店の中まで招きいれ、
持っていたバスケットを店の端にある机の上に乗せると、
ピアノの椅子を引き、私にその席を勧めてくれた。

何もいわず、おじ様に深く頭を下げ、
勧められるままに席に付くと蓋を開き、深く息を吸って、指をひとつ鍵盤に置いて見る。


ポーン


「良い…音ですね……。」


ポーン ポーン ポーン ………


一つ一つ音と指の感触を確認するように鍵盤を弾いて行く。
手入れの行き届いた良い音が、気が付けば私の中いっぱいにまで広がって、
単音から和音を奏で、両手一杯で音を確認すれば、
掛けていた椅子を座りなおし、
再び深く息を吸い込むと溜まっていた物を吐き出すように私は夢中になって弾いていた。


何ヶ月弾いてなかったんだろう……
仕事でもピアノは使うけど、この所別の仕事が忙しくてぜんぜん鍵盤に触れてなかった。
この世界に来てから3日目。
知らない事ばっかりだったけど、同じ事も一杯あって、
アルファベットと同じように、鍵盤の並びだって音だって、向こうと一緒。


やって行けるかな……


夢中になって弾いている傍ら頭の中はいろんな事で一杯になってて、
店員さんが放って置いてくれたから、
それを良い事に私は何曲も何曲も弾き続けて、
気が付いたら、日が暮れかけてもまだ帰宅していない私を心配して探しに来てくれた
エルリック兄弟が見つけて迎えに来てくれるまで私はのめり込んでいた。



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何が書きたかったのかさっぱりです(爆)

当初の予定ではハボといちゃついて買い物終わらせる予定だったんですよ。
でもここらでピアノだしとかないと無駄に話が先に進まないので、出しました。

ここで一番疑問なのは花子さんの職業だよな(笑)
どうでもいいけど背景左上固定って邪魔で邪魔で仕方ないですね。反省。