長く伸びた黒い髪が、白いシーツの上で華を咲かせ、
上から掛ける物無く、
普段着のまま、胸元を僅かに上下させながら、一人の女性が眠る。

「歌っていればいい…君は歌っていればいいんだよ……」

身動き一つ取らないその女性の頬に触れ、
薄い笑みを浮かべながら呪文でも唱えるかのように青い軍服の男が呟く。

薬の力か、目覚めを見せない女性の様子を確認すると、
男は静かに立ち上がり部屋を後にした。

軍靴の足音もじゅうたんに飲み込まれ、
小さな寝息だけが定期的に流れる部屋の中へ
閉じた扉に鍵の落ちる音を残して。



Act,25



ドリーム小説 「玄関に停まった車から軍人が?」

「って近所の人が……」

ロイが軍務を終え、ヒューズ・リザを連れ帰宅をした頃には、
その後、改めて電話を入れたロイの指示により、エルリック兄弟が近所への聞き込みを済ませていた。

「彼女が我が家に来て3日目か……」

4人が囲んだリビングテーブルに無造作に置かれた白い便箋にロイがわずかに視線を向ける。

「なんだよ?」

「そのお嬢さんもってこった。」

「ヒューズさん?」

「そのお嬢さんもロイをハメる為の布石だったんじゃないかって事だよ」

「そんな!」

まるでを犯人の仲間として括るヒューズの言葉に、
それまで大人しく座っていたアルフォンスが立ち上がった勢いで椅子を倒し、
それをロイが片手で制した。

「落ち着けアルフォンス。ヒューズはまだ彼女の事を殆ど知らん。
それに君の捉えた意味とは違う意味で捉えるとしたら……」

「『違う意味』?」

「『彼女自身に悪意はない』そういう事だなヒューズ」

「その「」ってお嬢さん以外でも良かったって話だよ。」

「大佐に対して「人質」と成り得る人物を与えたって事か。」

「可能性はあるな……」

「そんな…それじゃぁさんはただの被害者じゃないですか!」

「……このまま我々がここで話していても埒が明かんのは確かだ。
あちらからの動きを待つきもさらさら無い。」

「ただの変質者って線はないのか?」

「確かに可能性として無くは無いが、だったらわざわざロイにこんな手紙を寄こす意味はないだろう。足も付くしな。」

お互い考えている事は同じでも、感情的になっているアルフォンスを宥めるように
ロイがゆっくりと解説を加えて行く。
それにヒューズ・エドワードが口を沿え、会話を括った頃、ドアベルが鳴り、
私服姿のリザとハボックが顔を見せた。

「ご注文の品です。それとこれ。エド君に。」

「なんだこれ?」

軽い敬礼と共にリビングへと上がり込んだ二人は各々簡単な報告を済ませ、
リザはロイへと茶封筒を私、ついでエドワードに紙袋を渡した。

「お昼まともに食べてないんでしょう?」

エドワードが開いた紙の包みにはまだ温かいハンバーガーとポテト。

「サンキュウ中尉。……大佐もな。」

受け取った封筒から書類を取り出し中身を確認するロイに礼の言葉を述べながらもふいと背中を向け、
空腹を訴え始めていた育ち盛りの胃に今日始めての食事を与えながら、しっかりと聞き耳を立てる。

「そういえば入隊の時に挨拶に来ていたが、結構な資産家じゃないか。
屋敷が2つとホテルか……別荘はないのか?」

不器用なエドワードの感謝の言葉に苦笑を漏らしながら、
目を通した書類をヒューズにシフトしながら現状の確認を始める。

「あるにはありますが、ノースシティの郊外ですね。」

「国家錬金術師候補ですが、専門分野も試験前の書類提出が未だな為不明です。」

「同僚も目の前で錬金術使った所無いらしくて、本当に内容は不明なんっすよ。」

「そのお嬢さんは図書館で借りた本から出てきたんだろ。図書館の利用履歴は?」

「ありません。どうやら蔵書は自宅に買い込んでるみたいですね。」

「行って見るしかないだろうな。私は現住所になっている屋敷へ行こう。他は……」

軍務を終え、動ける人間の把握を済ませ、個々に指令を出すロイを、
じっと訴えるように二つの視線が待ち構える。
痛い程のその視線に気づいていたロイが最後に二人の兄弟に向いた。

「鋼のとアルフォンスはホテルだ。
今夜は家が煩くなりそうだからと何か理由を付けて、宿泊の手続きをしてしまえば良い。」

「結構高級ホテルだけど……僕らみたいな子供だけで大丈夫ですか?」

「俺が同行するさ。たまには贅沢も良いだろ。」

ヒューズが二人の肩をぽんと叩き、

「ヒューズが居るとはいえ……あまり派手に動いてくれるなよ。鋼の。
さて……では各自支持通りの持ち場へ付け!」


Yes, Sir!


それぞれ敬礼で返す中、
少し戸惑いながら右手を上げるエドワードの頭をくしゃりとひと撫でし、
アルフォンスの肩を叩き、ロイは中尉とハボックを連れ自宅を後にし、
残されたエドは撫でられた頭に触れながらその背中を見送る。

「俺たちも行くか………」

「はいっ!」

頷くエドにアルフォンスが通る声で返事をし、3人も続いてロイの自宅を後にした。




NEXT Act,26 /  Menu Top

私にもこの話が何部になるのかまだ分かっておりません(爆)
ただラストはもう仕上がってるし、
コンテは終わっているので、後は私の文章力と言うか……
バイタリティー次第?
私に書ききれるんだろうか(・_・ヾ